2018年3月5日月曜日

杉浦醫院四方山話―536『福山誠之館同窓会』VS『甲府一高同窓会』-2

 当館の図書資料の中に昭和62年度甲府中学・甲府一高同窓会が再販した「歴史資料写真集」と云う約50ページの冊子があります。奥付に初版は昭和54年1月で、これを増補改訂した第3版が62年3月、同年5月には第4版とありますから、需要があって版を重ねていることが分かります。


 この写真集は、望月春江の「鯉」から始まって鳥居雅隆や米倉寿仁等々の絵画、石橋湛山や中村星湖等々の「書」など「本校卒業生」の作品から講演のため来校した西脇順三郎の色紙など甲府中学・甲府一高が所蔵している文化資料の写真集です。


 この写真集が編まれるように甲府一高は、福山誠之館高校に勝るとも劣らない文化資源を擁しているのにその存在や内容が全くと云っていいほど知られていません。

その点、福山誠之館高校は学校が内包する歴史資料を同窓会が管理して公開していることがホームページ上からもうかがえます。

要は、学校と同窓会の「関係」の違いかも知れません。


 上記の「写真集」の中には、「校門門扉」「図書館前の池」「本館前庭」「校門西石庭」「日新ホール前庭」「中庭」等々の写真も入っていますが、それぞれの寄贈者は「東京同窓会」「甲子会」「御坂会」「惜城会」「昭和2年卒業生」等々、同窓会もしく同窓生有志が母校に寄贈したものであることが分かります。甲府一高同窓会は、母校に気前よく必要な備品や施設を寄付することが伝統になっているようです。昭和町の押原中学校の桜並木も同じように同窓生の手による植樹だったそうですから、山梨県の同窓会全体の傾向かも知れません。

 

 贈られた学校は、以後これらの維持管理をしてきたのでしょうが、在校生には学校を構成する一部としての認識しか持てないのが実際かと思います。福山誠之館同窓会は、このような同窓会の寄贈物を同窓会が積極的に常時周知活動をしていますから、在校生も同窓会の寄贈物に囲まれた学校であることを知りつつ同窓生となっていき、その伝統が継承されているのでしょう。


 まあ、よく言えば甲府一高同窓会は「金は出すが口は出さない」、福山誠之館同窓会は「金も口も出す」と云った感じもしますが、矢張り同窓会に対する風土の違いと解すのが妥当かな?と・・・・


 

 近々では、甲府一高の卒業生で、「中世史」の東京大学教授だった五味文彦氏の蔵書が市川大門町の旧二葉屋酒造店を改修したギャラリー内に寄贈されるそうです。同窓生である五味氏の学術書は、同窓会が窓口を開いておいて母校内に「五味文庫」を設け、公開した方が五味氏の意にも添うように思いました。同じような事例はもっとあるかと思うと矢張り「勿体無いなー」です。