2018年2月8日木曜日

杉浦醫院四方山話―533『松医会報85号』

 北里大学の寄生虫学の辻教授から「研究室の学生と杉浦醫院で研修会を持ちたいが、学生は来春から臨床に入るので、1月31日しか日時がとれない」旨の連絡があり「午後1時から4時までの3時間を杉浦醫院のプログラムでお願いします」との依頼がありました。

 これまでも麻布大学の「さくらサイエス」の研修会を毎年受けてきましたので「寒い館内ですが是非ご利用ください」と引き受けました。

3時間を内容あるモノにすべく辻教授からも「プログラムの中に実際に日本住血吸虫症の患者さんを診たお医者さんが居たら、その方のお話もお願いしたい」との注文もありましたから早速、巨摩共立病院名誉院長の加茂悦爾先生にお願いしました。


 加茂先生は、三郎先生が「地方病の事は加茂先生がいるから大丈夫」と、太鼓判を押した後輩で、当館も開館準備段階からご指導いただいたり、貴重な資料をご寄贈いただいたりしてきました。今回も加茂先生から「松医会報85号」をお土産に頂戴しました。


 「松医会報85号」は、平成19年秋に信州大学医学部松医会が発行した会報ですが、約150ページの会報と云うより書籍です。この85号では「日本住血吸虫症」を特集として取り上げ、信州大学医学部を卒業後、日本住血吸虫症の研究や臨床に携わった6名の医師と研究者のエッセーで構成されています。


 それぞれの先生方が自分と日本住血吸虫の「かかわり」についての随筆ですから、専門の医学用語が飛び交う学術誌と違って、私にも興味深く読めたのが特徴です。


 山梨大学医学部の前身山梨医大が開校したのは昭和53年ですから、山梨の地方病の研究、治療は、信州大学医学部出身の医師が中心でした。今回の執筆者6名は、甲府市立病院の故・井内正彦先生、市立病院の後輩で故・林正高先生、巨摩共立病院の加茂悦爾先生、後輩で後に横浜市立大学に転じた天野晧昭先生、東京医科歯科大学の太田伸生先生と綿々と現役の太田先生まで繋がっています。


 松医会は、「会報」を定期発行するでけでなく、現在の医学部学生も視野に入れての支援活動もしているようですから、信州大学医学部の鉄の結束の要になっているのでしょう。

上記6名の先生方も日本住血吸虫症の個々の研究分野は違っていてもお互い横の連絡も密で、信州大学の教授や先輩後輩が助け合っての研究活動であったことが分かります。

 

 そして、何よりも信州松本の地で青春を過ごした者同士の共通した価値観あるいは人生観のようなものが醸し出されていることです。それは、北杜夫の「ドクトルマンボウ青春記」の世界とも重なる大らかさが飾らぬ表現と確かな文章力で表出されています。

森鴎外から北杜夫や南木佳士まで、医者に作家が多いのも頷ける「松医会報」です。当館2階の座学スペースで自由に読めますので、お楽しみください。