2017年12月19日火曜日

杉浦醫院四方山話―528『小林清親の「酒機嫌十二相」』

 12月は忘年会の季節ですね。歳を重ねた今では「若い時はどうしてあんなに飲んだのだろう」と思うことがありますが、現在の若者は、職場の人間との酒席も敬遠しがちと云った話も聞きます。

まあ、何事も時代と共に変わっていくのは当たり前ですから、「お好きにどうぞ」でいいのでしょう。

 

 先日、所用で云った町田市の市立博物館で「滑稽展」の企画展が行われていました。

メインは「のらくろ」の漫画家・田川水泡展でしたが、田河さんが晩年を過ごした町田市玉川学園で、講談社から「滑稽の構造」、「滑稽の研究」の2冊を出版するなど、漫画家の素養として滑稽の研究に打ち込んだことから、この企画展も「“滑稽探索”田河水泡の研究とコレクション」と銘打たれていました。

 
 

小林清親: 「酒機嫌十二相之内」 「連れを困らせる酒くせ」 - 東京都立図書館   弟子の長谷川町子から手塚治虫まで、田川水泡がかかわった漫画家の展示と「滑稽研究」の過程で取り上げた先人の作品も紹介されていました。私が一番うれしかったのは、酔っぱらいの姿をコミカルに描いた小林清親(1847~1915年)の 「酒機嫌十二相」の貴重な絵画を目の当たりにすることが出来たことでした。「酒機嫌十二相」は、いわゆる12の酒癖が描かれた浮世絵ですが、例えば「連れを困らせる酒ぐせ」の絵はこちらです。

 酔っ払いの顔は、どの絵でも小林清親の写真の顔に似ていますから小林自身も相当な酒飲みだったのでしょう。「理屈を言い出す酒ぐせ」とか「気の小さくなる酒癖」など様々な「酒癖」の観察も緻密で、「滑稽」の神髄、典型のように思いました。

 

 「まあ、何事も時代と共に変わっていくのは当たり前ですから・・・」と書きましたが、「酒機嫌十二相」を観る限り、酒癖は時代が変わっても変わらないものであることを実感します。

 

 「祖父は、お酒は飲めない体質だったのにお酒の席は好きで、水を飲みながらの酔ったふりが上手で、みんなだまされていたようです」と純子さんが健造先生の酒癖の話をしてくれましたから、ひょっとして小林清親も自分は飲まずにじーっと呑兵衛を観察した結果が、「酒機嫌十二相」を生んだのかもしれません。

 

「“滑稽探索”田河水泡の研究とコレクション」展は、町田市立博物館で、1月21日まで開催。一般300円、中学生以下無料。毎週月曜と12月28日~1月4日は休館(1月8日は開館し、翌9日休館)。