2015年1月28日水曜日

杉浦醫院四方山話―395 阿刀田高講演会 『読書保険論』

  阿刀田氏の読書遍歴は、父親の落語全集から野村胡堂の「銭形平次」を経て、芥川龍之介の作品へと移って行ったそうですが、振り返れば「物心ついた時から本が好きだった」ので「読書が素晴らしいのは宮沢りえが美しいのと同じで当たり前のこと」でもあったから、「どうしたら子どもが本を読むようになるか?」と云った質問が一番困るそうです。


 

 今回の講演会の質疑応答では、その手の質問はありませんでしたが、「社会のIT化に伴う紙媒体の行く末」についての質問がありました。それに関連して、講演の中で阿刀田氏は、日本の中央紙と呼ばれている新聞の特徴について言及されました。

 

 下の写真は、上から朝日・日経・毎日・読売の昨日の朝刊一面下段の広告欄です。

 阿刀田氏は「地方紙」はともかく、中央紙の一面の下は現在も全て本の宣伝です。これは、出版社もここでPRすれば確実に売れるから出すわけで、新聞も衰退は避けられないでしょうが、一面の広告が毎日、本の広告であることは矢張り識字率の高い日本ならではの特徴ですから、絵本を含め本の持つ魅力や力は、本しかなかった時代と違う意味で残っていくだろう」と指摘されました。


この一面の文字広告は、三八広告(さんやつこうこく)と云うそうで、名前の由来は、3段分のスペースを8つに分けたことによりますが、最近は読者の高齢化に伴い?朝日・読売のように6つに分けて大きくしているケースも見受けられます。

この1枠の費用は、朝日新聞だと約150万円のようですから、出版社の費用対効果も案じられます。


 阿刀田氏の指摘を受けて、町立図書館が備えている中央紙の同じ日の「三八広告」を撮影して気づいたのですが、ダブって広告している「本」は、朝日と読売にある「小説と推理」だけですから、出版社も自社本PRをどの新聞に載せるのが有効なのか?統計等を駆使して選択しているのでしょう。

 阿刀田氏は「本は、読んでいけば必ず面白くなるように仕組まれているから、最初はちょっと労力がいるけど読み進めることが大事」とし「スポーツの練習と比べれば読書を習慣化するのは楽なもの」ですから「掛け金を支払うつもりで、若い時から読書の習慣をつけておけば、本当の保険は、配当が返ってこないことがあるけど、読書の掛け金は、老後確実に返ってくる」と「読書保険論」を提唱されました。
 

 80歳とは思えない滑舌で生き生き話す阿刀田氏の「読書保険論」は、確かに説得力がありました。