2014年10月20日月曜日

杉浦醫院四方山話―371『有楽流・秋の茶会-1』

 一昨年に続き、19日(日)に母屋の座敷・清韻亭において、純子さんも長く師匠として活躍された有楽流の秋の茶会が開催されました。

純子さんは「私はもう歳ですから引退した身ですが、ここでやると参加者も多くなるというので会場をお貸しするだけで・・・何も出来ませんが」と控えめにおっしゃっていましたが、昔からの社中の方々との再会も愉しみのようでした。




 前回の清韻亭での秋の茶会は、お釜をはじめとする茶道具から掛け軸まで全て純子さんのコレクションでの開催でしたが、今回は、有楽流山梨支部の品や会員の所持品での開催でしたので、ご紹介します。


 

 茶会での床の間は、その席主の想いが込められたものだそうですから、先ず床の間の品々です。今回は武川会長の茶軸と季節の花と香合をバランス良く配した設えになっていました。

この三点の組合せで、床の間全体が一つの小宇宙になるようですが、これは着物と帯と履物の組合せと同じで、一つひとつ単独で観る時と組合せて全体で観るのとでは趣も変わってきます。

 「茶軸は、天祥作の紅葉です」と歌の解説もいただきましたが、書に見とれてはっきり覚えていません。奈良の紅葉の名所・龍田川の秋を歌ったものでしょうが、漢字とかなのバランスと右上から左下に流れるような構成は、龍田川を表出しているかのようです。

 同じ龍田川の紅葉を歌ったものでは、六歌仙の一人で、平安時代きっての色男として伊勢物語では「昔男ありけり」と謳われた、稀代のプレイボーイ・在原業平の『千早(ちはや)ぶる 神代(かみよ)もきかず 龍田川(たつたがは) からくれなゐに 水くくるとは』が有名ですが、これを機に「天祥」についても調べてみようと思います。

 

 紅葉の茶軸に秋の花九点を活け、虎竹の籠で包んだ見事な季節の花で、ミニザクロまで盛られている花々の名前もご教示いただきましたが、これもうっとり見とれていて覚えていません。   挙句に「秋の花でこういう感じにと花屋さんに注文するんですか?」とバカな質問をして「お茶をする者は花も活けますから、これも自分たちで活けました」と。同席したM氏も「そう云えば、うちの庭にみんなあるような花だ」と発しましたが、どこにでも咲いている季節の花も活け方のセンスでこのように絵になるのでしょう。

 

 帛紗(ふくさ)の上の「香合(こうごう)」です。帛紗は、着物の帯にはさんで茶道具を拭い清める絹の布ですが、他の流派では帯の左側にはさむのが一般的ですが、武家の茶道・有楽流では左側には刀が入りますから右側にはさむそうです。帛紗の折り目には、紫色の有楽の桐の紋と白く織田家の木瓜紋(もっこうもん)が配されています。織田家にはいくつもの紋があるようですが、お茶のときは、桐の紋を使ったことから有楽流の紋になっているようです。

 香合(こうごう)は、香を収納する蓋付きの小さな容器の茶道具です。今回の香合には雁が三羽舞っていますが、お茶菓子も「月に雁」の饅頭、箸も花籠と同じ虎竹で統一されるなど細かな所まで気配りが行き届き「だいたいでいいやダイタイデ」と云った大雑把な人間には窮屈でもありますが、大変勉強になり、あらためて「茶道は日本文化の総体」を実感しました。