2014年1月22日水曜日

 杉浦醫院四方山話―306 『泉 昌彦著「地方病は死なず」』

 書籍資料収集の過程で、泉昌彦著『地方病は死なずー山梨県「日本住血吸虫病」の実態ー』という本が1980年に新泉社から出ていることは前から知っていましたが、ひょんなことから郷土資料が充実している富士河口湖図書館の郷土資料室で、泉昌彦著「よばい星」(柳正堂出版刊)と云う本が目に留まりました。                              
  「あれ、泉昌彦は地方病は死なずの著者だよな」と思い、ページをめくると興味深い話が・・・・
赤松啓介氏の山梨版と云った感じで、足で取材した民俗学者の面白さと凄さが伝わり、さっそく借りました。
 
 泉昌彦氏は、他にも写真のような「伝説と怪談」シリーズや「現地取材 領海なき島・竹島 : 独島秘史」など多彩な文筆活動もされた甲州人ですが、「つぶて」の中澤厚氏同様実績の割に周知されていないように思います。
 1980年に出版された 『現地取材・領海なき島・竹島 独島秘史』は、「竹島は韓国の領土である」と云う明確な主張を日本の古文書だけではなく、朝鮮の古文書にも当たり、論じているのが特徴のようなので、時節柄一読したいのですが、島根県立図書館と島根大学図書館にしか無いようです。聞き取り調査や古文書解読など地道な作業を継続していく中で、権威やアカデニズムとは無縁な自由な発想と結論が、山梨でも陽の目を見ない異端研究者として扱われてきたように思います。

 たとえば、泉昌彦氏の「地方病は死なず」も「よばい星」や「現地取材 領海なき島・竹島 : 独島秘史」とジャンルこそ違うものの泉氏のスタンスや視点は共通しているのが特徴です。      昭和町立図書館にも収蔵されていますので、詳細は読んでいただくとして、地方病が山梨県に蔓延した実態として、「私が受けた種々の仕打ちには農民に対する悪感情のみ残されてしまった。他人に迷惑もかけず生活している私たちにさえ、居たたまれないような嫌がらせをする冷酷な排他性と愚民性こそ、地方病を蔓延させてきた要因であると、私は確信する」と結んでいるように「来たりモノ=新参者」に対する「おいっつき=先住者」の嫌がらせと村八分の実態を自らの体験を通した言葉で書き、閉鎖的な県民性が、自然環境や生活環境、医学的研究にも及んで、この病気の終息を遅らせてきたという視点で一貫し、考えさせられます。