2013年11月20日水曜日

 杉浦醫院四方山話―292 『ヨロビ起こし』

 現在進行中の納屋の改修工事で、設計士と棟梁が工法を検討するなど一番気を遣った工事は、建物東側が約10センチ落ち込み、全体が東側に傾斜している「ヨロビ起こし」と云う修正工事でした。土壁をすべて落してしまえば比較的簡単な工事のようですが、現在の土壁は生かすことが前提ですので、笹本棟梁は、特注の金具を発注して、東側壁全体をジャッキアップし、腐食している土台を差し替え高さを調節して、元に戻すという工法で工事にかかりました。右写真が特注の金具です。この金具を内と外で連結して計6個セットしました。                                       更にジャッキアップしたとき浮いた壁の重量で、梁や柱が広がらないよう帯ラジェット(下写真のグリーンの帯)やチェーンラジェットでしっかり絞めて固定しておきます。

右写真のように特注金具と下のジャッキとの高さに合わせた柱を6個所にセットして、いよいよジャッキアップと云うところまで進みました。   当初予定した通りに事が運ばないのは、土蔵の改修工事でも経験済みでしたが、今回も屋根瓦を外して屋根の下地作業を始めると雨漏りで腐っている梁や土台、垂木などが随所で明らかになり、新たに刻みをして新しい梁や土台に入れ替える作業が次々起こります。
 ここまで、セットされた段階で、設計監理を担当している薬袋設計士を交えての協議の末、基礎の石も一度外して、基礎が沈まないよう基礎石の下を採石とコンクリートで補強してから再度基礎石を積み、新たな土台に入れ替えることになり、土間の土を掘り出して約30センチ掘り下げることになりました。             要は、具体的な問題に直面したらその都度、みんなの知恵でより良い工法や手順を考えて、現場の大工さんが試行錯誤格闘して事を運ぶ以外ないということが、改修工事の大変なところでもあり、面白いとこでもあるようです。取り壊して新しく建て直した方が安く出来ると云う現代では、「ヨロビ起こし」の工事など滅多にないそうですから、工法も現場の状態から編み出すしかないようです。