2013年1月9日水曜日

杉浦醫院四方山話―209 『鏡開き・吉例之庫開福引き』

 現在は1月11日に行うのが一般的な正月の鏡餅を下げて食べる儀式が「鏡開き」です。剣道や柔道で寒稽古(かんげいこ)を行い、鏡餅でお汁粉をつくって食べるニュースが、鏡開きの定番でしょうか。鏡餅は、刃物で切ることを忌み、手で欠いたり槌(つち)でたたいたりして割って食べるのも「開く」というめでたい言葉を使って縁起を担いだ結果でしょう。この鏡開きの日とされている11日は、元は商家の仕事始めにあたる「蔵開き」の日でした。                                  
杉浦家に残る数多い歴史資料の中の一つに昭和11年と12年の1月11日付け「吉例之庫開福引き」の手書きの和綴じ書き物があります。
純子さんも「西条新田は長いこと40軒でしたから、1月11日には村の方々をお呼びして、お汁粉を食べながら福引をしました」「若い看護婦さんが並んで皆さんをお迎えしましたが、嫌な顔せず何でもしましたから若かったのにあの頃の方は偉かったですね」と懐かしそうに話してくれます。杉浦家は商家ではありませんから「蔵開き」とは表現せず「庫開き」と「くら」の字を変えての福引き大会だったようです。納屋には、現在も酒樽がいくつも残っていますが、健造先生も三郎先生もお酒は飲まなかったと云いますから、この庫開きで振る舞った名残でしょう。
 40軒の村内で杉浦家が用意した福引景品は、昭和11年が115品、昭和12年が117品ですから、杉浦家の鏡開き「吉例之庫開福引き」は、村内老若男女の正月行事でもあったのでしょう。
この日の為に「杉浦家執事」も毎年、知恵を絞って品選びをし、その景品とコントを残しています。
福引で「新婚旅行」の札を引いた人には「キャラメルと足袋」が当たり、その心は「甘い旅」と紹介して、場を盛り上げる粋な計らいです。これを百以上考えるのは大変だったと思いますが、トンチやダジャレを駆使して、いかに面白く目出度く演出するかを仕掛ける訳で、ノドカでもありヤリがいもあって恒例となったのでしょう。ビンゴゲームに取って代わった今日、当時の執事に敬意を表しつつ勝手に選んだベスト5をご紹介して、約75年前の正月行事と風土に思いを馳せてみるのも一興でしょう。
<目出度記ベスト5>
1.「西条村」には「封筒」、その心は「中に新田(親展)もあるよ」。
2.「三郎先生」には「猿股」、その心は「博士(はかせ)ろ」。
3.「躍進日本」には「赤塗丸盆」、その心は「日の出の勢い」。
4.「甲府の銀座」には「密柑と燐寸」、その心は「三日町(みっかまち)」。
5.「好い女房」には「薬缶」、その心は「妬かん」。 
で、<めでたし、めでたし>