2012年11月17日土曜日

杉浦醫院四方山話―198 『生まれる子に罪はないけれど』

 杉浦家には、健造先生や三郎先生が報じられた新聞や雑誌が保存してあり、当時の研究や治療の医療事情から人柄まで分かり貴重な資料として大変助かっていますが、その新聞に載っている他のニュースや広告も面白く、つい一緒に読んでしまいます。
 昭和31年8月31日金曜日の朝日新聞全国版の「人寸評」と云うコラムに「米国から研究奨励金を受ける・杉浦三郎」の見出しで、顔写真入りの三郎先生の寸評が載っています。
 ≪この人の妙な癖は年齢のサバを読むこと。年を聞かれるときまって「58歳」と答える。が実は60歳。「60歳といえば定年でしょう。学者は将来があるようにしておかなければ」というのが弁明だ。≫といった内容の「寸評」が続きますが、評した人が誰なのか署名がありません。「人物評」は、評す人の目を通した評価ですから、その人の視点や価値観で三郎先生の寸評も大きく違ってくるものと思います。当然、署名すべき記事のように思いますが・・・これも時代の違いでしょうか。
同じ紙面に川端康成の連載新聞小説「女であること」の168話があり、最下段には、「週刊朝日」と「アサヒグラフ」の広告が2段抜きでありました。「週刊朝日」と云えば、佐野眞一の「ハシシタ」記事で物議をかもし、朝日側の全面謝罪で落着しましたが、それについては、副島隆彦の学問道場「今日のぼやき1340話―橋下徹大阪市長や一部大阪市特別顧問による「週刊朝日」に対する“言論弾圧”問題について考えるー」の中田安彦氏の論考が現時点ではベストな考察だと私は思いますが・・・    
「週刊朝日昭和31年9月9日号」で、「生まれる子に罪はないけど」と報じているのは、日本の人口問題で、「南から北へ、山だらけの細長い国土に九千万という人口・・・考えただけで頭が痛くなる。しかも1年に約百万人ずつ増えている」と、日本の人口増を危惧する特集記事です。総人口が1億2665万人になった今日、「少子化に歯止めを!」「少子化対策を!」と騒ぎ、多額の税金を投入して少子化を何とかしようとしている日本です。現代も世界規模の「人口問題」は明らかに「人口が増えすぎて困る問題」です。地球規模の「環境問題」もペットボトルのリサイクルより「人口を減らす問題」です。昭和31年に九千万人になろうという日本の人口増に頭を痛めて、減らす必要を特集した「週刊朝日」。「年金体制維持にも少子化対策は必要不可欠」と寝ぼけた目先の一国主義は、グローバル社会では通用しないことなど「本当のこと」は報道されない現代日本。50年前のジャーナリズムの方が・・・と、考えさせられました。