2012年11月14日水曜日

杉浦醫院四方山話―197 『イギリス葺き』

 日本で茅葺(かやぶき)屋根の家屋を見かけると懐かしさと珍しさで足を止めてしまいますが、イギリスはじめヨーロッパでは、茅葺屋根はステータスとして、現在も高級住宅地の新築家屋には使われているそうです。日本でも茅葺屋根をトタンや銅板で覆って、合掌造りや兜造りの家屋、古民家を残している集落の取り組みもありますが、茅葺屋根の葺き替えをする職人さんも日本には数少なくなっているそうです。
 現在進行中の土蔵の整備改修工事には、大工さんはじめ左官さん、屋根屋さん等々の職人さんが入っていますが、先日見えた板金屋さんが、土蔵の隣の旧車庫の屋根を見て、「イギリス葺きと日本葺きが一緒なのも珍しいなー。多分、後から補修したじゃねーの左の日本葺きは。元々は全部イギリス葺きだったと思うよ。イギリス葺きは、雨戸の戸袋にもよく使ったけどねー」と話してくれました。
 早速調べてみると、一口でトタン屋根と言っても葺き方の種類は非常に豊富で、大きく分けると棒葺き、平葺き、横葺き、菱葺き、亀甲葺き、波トタン葺き等に分かれます。
板金屋さんが教えてくれた「イギリス葺き」は、「菱葺き」もしくは「亀甲葺き」の総称のようで、確かに雨戸の戸袋にはありました。
 菱葺きは、菱形のトタンを葺いていく方法で、トタン葺きの屋根としては最高のようです。菱形を更に細工して亀の甲羅形にしたものを亀甲葺きと云い、デザイン的にも見栄えする意匠葺きのようです。そう云えば学生の頃、横浜の裏通りをうろついて「何だ。横浜って洒落た街だと思っていたけど、屋根も壁もトタンの家ばっかりで・・・」とトタンを蔑んだ記憶が蘇りましたが、多分に「日本葺き」の平葺き屋根と波トタンを打ちつけた壁だったように思います。「イギリス葺き」の亀甲葺きや菱葺きは、素材がトタンでもましては銅板だったら確かに見事な板金文化だなー・・・と、途端に相変わらずのトタン蔑視が見え隠れしてしまい、トタンにはホント申し訳ありません。