2012年8月15日水曜日

杉浦醫院四方山話―167 『皇室フリーク-2』

 前話で、昭和天皇が生物学者であったことに触れましたが、現在の天皇も「ハゼの研究」や「水生小動物の研究」では、世界的に知られた研究成果をあげているそうですし、秋篠宮は「ナマズの研究」、黒田清子女史も山階鳥類研究所の研究助手でしたから、皇族の研究対象は「生物学」が定番と云った印象もするので、早速、丁宗鉄著「天皇はなぜ生物学を研究するのか」(講談社+α新書)を読んでみました。
興味や詳細を知りたい方は、本書を読んでいただくとして「なぜ生物学なのか?」についての著者の見解は、私には説得力がありましたから、ご紹介します。
本書によると日本の皇室が範とし、親しく交流してきたのは、ブータン国王一族ではなく、英国王室をはじめとするヨーロッパの王室や貴族であったことに「生物学」も由来しているそうです。これは、ヨーロッパ諸国の階級制度が背景にあり、現存する階級制度の最高位である貴族の嗜み(たしなみ)は、教養としての「学問」であり、たとえば日本の有産階級が好んでしたゴルフも下衆な嗜みで、あくまでも庶民のスポーツの一つであり、野球やサッカーのひいきのチームに熱を上げるのも庶民の嗜みと云った特権意識と差別意識に支えられた嗜みの階級化を日本の皇室も見本にした結果だと分析しています。
 その上で、日本の皇族に「学問を嗜み(たしなみ)」として取れ入れるに際し、国民の利害と密接に関連する政治学や経済学あるいは評価の分かれる歴史学などは差し障りがあるので、誰の利害も損なわず安心して発表もできる生物学が皇室御用達学問として定着したと論じています。「顕微鏡」が生物学研究の要ですが、家一軒分にも相当する最高級品を揃えることで、新たな発見も含め研究しやすい分野が生物学であったのだと云う著者の見解は、ズバリと云った感じで、大変面白く読めました。
ここからは私見で恐縮ですが、何かと話題の皇太子は、生物学では話題になりませんね。皇太子は、学習院大学文学部史学科で、専門は中世交通史ですから、歴史学を嗜みにしました。オックスフォード留学でもテムズ川の水運史を研究し、帰国後も学習院の大学院で中世交通史の研究を続け「室町前中期の兵庫関の二、三の問題」と題する論文も公表しています。要は、生物学研究ご一家の中にあって文科系を選択した異端でもあった訳です。中世水運史は現在の利害とは直接には関係しないとはいえ、雅子妃選びにも繋がる皇太子の自己主張を感じます。この辺については、皇太子と云えばビオラ演奏で、音楽が嗜みのような報道が多く不満ですし、雅子妃の健康問題も含め諸々の情報も集めている私も結構な皇室フリークだと思いますが、「スカートまくりもお嬢のスカートじゃなければ意味がない」のピーピングTomと同レベルの類いであることも確かでしょう。