2012年6月21日木曜日

杉浦醫院四方山話―150 『蛇の目傘-1』

 先日、西条小学校4年生の3クラスの児童が、クラスごと時間をずらして見学に来ました。事前学習もしっかりして、杉浦医院に絞っての見学学習だということですから、病院棟だけでなく母屋も玄関先から中を見るよう案内しました。
障子を開けると直ぐ畳10畳の座敷ですから、現代家屋ではなかなか体験できない造りに子どもは興味深く覗きこんでいました。すると、男の子が玄関脇の陶器の傘立から頭だけ見える傘を指差し「これは昔のカサですか?」と質問しました。前から、番傘風の傘が1本入っているのは承知していましたが、取り出して開いてみるのは初めてでした。「よく気が付いたねー」と言いながら開くとバサッとスムーズに開き、十分現役の蛇の目傘でした。
子どもの眼や興味は何処に向くか分からない面白さもありますが、養老大先生がよく指摘するように「子どもには、ディテール(ささやかな違い、わずかな差)を見る目がある」のでしょう。「家の構造も随分違う、他にも違うものは・・」と傘立に目が行って「これは昔のカサですか?」「どうして頭が上に入ってるの?」「紙のようだけど?」
あらためて、「大人は子どもの夕暮れ」を実感させられました。
そんな訳で、純子さんにお借りして、傘立の「蛇の目傘」を撮影した2枚です。ご覧のように竹と和紙と木を素材に精巧なつくりの和傘は、漆と油で防水加工され、数十年経っても純子さんに愛用されています。「これは、番傘代りの蛇の目ですが、軽くてちょっとさすのに重宝です。今の傘と違って2段に開くので、雨の日の車の乗り降りには便利ですね」「着物には洋傘と云う訳に行きませんから、他にも何本かあります。ゴミのようなもですから捨てて結構ですが、探してお持ちします」と、至って控え目な物云いが身上の純子さんですが、「蛇の目が何本もなんて、夜目、遠目、傘の内って云いますから、必要だったってことでしょうね」と笑いながらの一層深く洒脱な謙譲のトドメに「今では夜目、遠目、帽子の内って、女性が男を揶揄してます」と見事にハズシた返答で、勝負ありですね。