2012年5月19日土曜日

杉浦醫院四方山話―142 『渡辺隆次生命曼荼羅展』

 小渕沢ICから鉢巻道路を車で15分も走ると富士見高原を抜けて長野県原村に入ります。この道路沿いに30年以上前に原村が開設した「八ヶ岳美術館」があります。信州原村は、八ヶ岳山麓の別荘地としても人気なように豊かな自然に抱かれた高原で、文化功労者で日本芸術院会員であった彫刻家・清水多嘉示氏の出身地です。清水氏の作品寄贈を受けた村は、1980年(昭和55年)、当時では珍しい村立美術館としてこの美術館を開館しました。建築家・村野藤吾の設計で、連続ドーム型のユニークな建物も話題になりましたが、常設展は、原村出身の書家・津金寉仙の書作品と清水多嘉示の彫刻と絵画ですが、その作品数と内容は圧巻です。
同時に、八ヶ岳山麓に工房を構えている様々な芸術家を紹介する「企画展」も開催してきましたが、現在は、北杜市長坂町在住の渡辺隆次氏の「生命曼荼羅展」を6月3日まで開催中です。
 渡辺画伯には、昭和町タイムリー講座の講師やカルチャーデザイン倶楽部のイベントなどでも来町いただいてきましたが、ラジオ深夜便やエッセイで、その繊細な感覚と機知に富んだ話に魅せられたファンは全国区です。絵画も細密なタッチと圧倒的な迫力の幻想的な作品が特徴ですが、長坂にアトリエを構えてからは、武田神社菱和殿の天井画120枚を全て山梨の動植物で描いたように甲州の自然や風土に根ざした作品も多数出品されています。絵画のみならず、エッセイストとしても『きのこの絵本』『山のごちそう』『八ヶ岳 風のスケッチ』を著し、画文集『花づくし実づくし―武田神社菱和殿天井画―』を上梓するなど精力的な創作活動を続けています。個人的には、渡辺画伯の手による友人でもある詩人吉増剛造の絶版詩集も展示されていて、若かりし頃、アバンギャルド(前衛芸術)の尖兵だったという画伯の辺凛と現在が対照され、感慨深く鑑賞することができました。
 このように今回の八ヶ岳美術館の企画展は、渡辺画伯の現在までの軌跡が網羅され、その全貌が観られる大変な力のこもった企画で、それに応えた作品数と展示方法に渡辺画伯の姿勢も感じ取れ、常設展と合わせて500円という入館料にも本当に頭が下がりました。
企画展の一環として、今度の日曜日5月27日(日)13時から「武田神社菱和殿天井画見学会」が、渡辺隆次氏の解説付きで催されます。武田神社菱和殿は、七五三等でも入られた方も多いかと思いますが、武田神社能楽殿の鏡板と合わせて、ご鑑賞をお勧めします。