2011年11月16日水曜日

杉浦醫院四方山話―92 『プレ・オープン1周年-2』


杉浦家母屋玄関には、大きな鉢植えの観葉植物、主にシュロ竹の鉢植えがずらっと並んでいる写真が多数残っています。また、三郎先生愛用の机の中には、「観音竹と朱呂竹=品種・栽培・繁殖=」という本もあり、研究しながら育てていた様子もうかがえます。
 このシュロ竹を冬の間の寒さから守るために造られたのが、写真右上のムロ=温室です。寒くなるとムロへ、温かくなると玄関先へと重い鉢植えの植物を移動しなければならないことから、三郎先生亡き後、アピオに貸し出し、ロビーやエントランスを飾っていたそうです。 「アピオのA社長さんが辞める時、シュロ竹はどうしましょうかと聞かれましたが、返していただいても管理できませんから、そのままにしました。現在もアピオには、幾鉢かあると聞いていますが・・」 「男の方が十人いても鉢ですから持てるのはせいぜい三人で、裏まで運ぶのが大変でした」 「祖父健造が横浜から一鉢買って来たのものが、竹ですから株分けしないと鉢が割れる程どんどん伸びて、増えていったようです。確か、最初は瓦屋根の部分だけの温室でしたが、鉢が増えたことから、左側に継ぎ足して今の形になったと記憶しています」
「特に夏は、水をたっぷりかけるよう言われましたが、そのせいか蚊が多く、刺されるのが嫌だったこともあり、私はあまり好きになれませんでした」と純子さん。
このムロは、温室としての機能を優先したのでしょう、建物は南西向きで日当たりが良い上に、下から上まで三段の全面ガラス戸で、陽が中まで射すようになっていました。さらに鉢の土の部分に陽が当たるようコンクリートの床には長方形の小プールのような穴が2か所並列に掘られ、重い鉢をこの穴に納めたり、出す為に穴の上には太い梁が通り、滑車がかかっていました。写真の稲藁がかかっているのがその梁です。
建築基準法の耐震強度をクリアするよう両端を筋かい入りの壁に変更した以外、この構造と骨組、形、大きさはそのままに整備したのが右下の写真です。Aボーリングの社長さんが「これが、あのムロけぇー」と驚いたように、現在は休憩室を兼ねた交流施設として、古民家カフェのような趣もあります。元温室ですから流石によく陽が入り、5月頃から「暑つ過ぎて・・・」で、日除けに寒冷紗を張り、凌ぎましたが、これからの季節には暖房無しでも温かく利用できるものと思います。寄贈された書籍や新聞を備え、小企画展なども開催していますので、ご自由にご活用下さい。