2011年7月1日金曜日

杉浦醫院四方山話―58 『我が糞闘記の高橋積氏』

 「もう、梅雨も明けてるんじゃない?」と云いたくなるような夏空のもと、異常な暑さが続く甲府盆地です。暑い時に熱い人から久しぶりに篤い電話がありましたので・・
熱い人は、当年80歳を迎える田富町在住の高橋積氏です。昨年2月に山日新聞紙上に「杉浦邸を町が保存へ」と云う記事が載ったその日、高橋氏の初訪問を受けました。    資料が入った袋を前に「これを俺が寄付するから、地方病の資料館にするじゃん」「県の博物館には裏切られたけど昭和町はたいしたもんだ」「俺は、地方病を語れるただ一人の語り部だから、協力するから・・」と初対面から熱かったのを思い出します。「杉浦医院は医学で地方病撲滅に貢献した先生だ。俺は保健所で検便一筋40年、行政の立場から撲滅にかかわった生き証人だから」と著書「我が糞闘記」を取り出し「これも寄贈する」と・・・それ以降、高橋氏の訪問は「新しい資料が出てきたから」「これはまだ渡してなかったら?」「県立博物館に俺が寄贈した資料を昭和町で使ったらどうだ」から「県の臨時職員で採用され、これでもかと頑張って最後は管理職になった」自分史まで、話題は尽きません。
糞便検査の卵
「普通塗抹法は、一般的だから知ってると思うけど・・・」「エオジン染色集卵法は、遠心分離機を使って・・」「エライサ法は比内反応をみるやつで・・・」とやはり「検便」については、その方法から当時の実態まで、一層熱い語りになりました。そんな積もる話の高橋さんですから、いつからか「ツモルさん」と私は気安く呼ぶようになりましたが、本名でもあるので、嫌な顔一つせず気軽に貴重な話をしてくれました。ここにきて、しばらく音沙汰がないなと思っていた矢先「中学生用の資料を作ったから、ウチに取りに来てくれ」「その為に新しいワープロも買ったから見せてやる」「車を買い替えたら、震災の影響で2カ月待ってもまだ来ないから、俺が行けない」と一気です。「ツモルさん、一般的には免許返上のお歳ですよね」「まだ、やることがいっぱいだから、車がねーと動けんじゃん。今日待ってる」で、切れてしまいました。いつもこんな感じですので驚きませんが、ホント篤いツモルさんに暑さ寒さは関係ありません。地元区民が生涯学習で来館した折、持ち時間30分で高橋さんに「語り部」をお願いしました。予想通り、45分経っても未だ話半分といった熱演!語っておきたいことが掛け値なしに詰まっているツモルさんに30分は、酷だったな~と反省しましたが、語り手の真剣さと情熱は、聞く方にも伝わり「長いゾー」の声もなくツモル講演会は無事終了しました。「ツモルさん、次からは、語り部と云うより、俺は地方病博士だ!実演会でどうでしょう」にも「お―それもいいな」とやる気満々の糞闘家の奮闘は永遠です。