2011年2月3日木曜日

杉浦醫院四方山話―24 『もてなし』

 杉浦純子さんは、茶道「有楽流」のお師匠さんですから、母屋には、若いお弟子さんから師匠の方々など茶道仲間がよく集います。千利休が示した「茶の七則」には、「もてなし」と「しつらえ」が全ての基本と記されています。「もてなし」 は、「心に余裕を持ち、相手に悟られないよう相手の感覚を尊重し、一期一会を楽しめるよう配慮することで、相手によりよい体験をもたらすこと」とあります。
このもてなしの真髄を識ってか否か、どこかの県か市で「おもてなし課」を創設したと聞きましたが、「看板に偽りあり」とならければ良いが・・・と心配してしまいます。さらに、的確なもてなしには、その準備を整える「しつらえ」が肝心と説かれています。「しつらえの真髄は、本質を的確に表現しつつ、本質を端的な形で表現する為に心地よい演出を加えて、相手に快適な気分を味わってもらうことで、相手によりよい体験をもたらすこと」とたたみ掛けられます。まあ、田吾作の私にはよく分かりませんが、「相手によりよい体験をもたらす」為には、「もてなし」と「しつらえ」を会得することだと理解しました。
 この精神に則っているかどうかは微妙ですが、健造先生の「もてなし」は、大変分かりやすく親しみが持てます。「杉浦健造先生頌徳誌」の中に「本県地方病研究並ビニ小学校職員生徒ノ身体検査ノ為ニ招致セル新潟医科大学教授以下学生ノ慰労ノ為、先生自ラ作詞作曲セル小唄、音頭アリ」と健造先生作詞作曲の「甲州音頭」など4作品が紹介されています。

=甲州音頭=
甲府 東にアリャ 新潟 西に 音頭とるなら西条よ   
ヨイトナ ヤレ ヨイトナ 音頭とるなら西条よ   
スッチョコ スッチョン スッチョンナ ヤレ スッチョン スッチョン チョン
医者になるなら 新潟の医科に   入る学生 皆博士
新潟医科の大学 世界の王座   卒業学生は 皆博士
お国自慢は 博士と美人   清き流れは 信濃川

健造先生胸像
 「末は博士か大臣か」の時代、三郎先生の母校でもある新潟医科大学の教授や学生の来村を軽妙洒脱に「もてなし」た健造先生の心意気は、甲府夜曲・博士行進曲・甲州小唄と共に「甲州一流芸者ヲシテ、レコードと為シ、新潟医科大学ニ贈リ、杉浦家ニモ保存スト聞ク」とあります。「趣味はもっぱら煙草だけでした」という三郎先生とは対照的に若松町の芸者さんを呼んでは宴席をよく設けたという健造先生。お洒落で、歌も詠み、蛍を愛でる風流人でもある郷土醫にして、村長でした。