2011年1月13日木曜日

杉浦醫院四方山話―19 『知水』

 プレ・オープン早々に来館いただいた富士常葉大学名誉教授で、風土工学研究所副所長の竹林征三工学博士から、著書「甲斐路と富士川」を当館にご寄贈いただきました。
先生は、昭和61年に関東地方建設局甲府工事事務所長として赴任され、山梨県の道路、橋、河川改修等々の指揮を執ったことから、「山梨の川を守り、道を拓く」思いが詰まった読み応えのある内容の本です。ご希望の方は、055-226-0290(山梨土木学会)でも入手可能ですし、当館でも貸し出しできます。
生命の維持にも欠かせない「水」
 「昭和町の歴史は水の歴史」と専門家からも指摘され、釜無川や南アルプス伏流水の「治水」「利水」については、これまでも見聞してきましたが、竹林先生は、「知水」「敬水」「馴水」という言葉と概念を「治水」「利水」に優先して考えるべきだと指摘しています。そこで、含蓄ある「知水」についての概要をご紹介します。
 先生は、≪水の本性を徹底的に知ることを「知水」≫と呼び、水の理について、孫子の兵法書にもあたり≪水は、一定の形がなく器に合わせて形を変える柔軟性があり、高所を避け、低所へ流下する否抵抗性を持ちつつ、いざとなれば、岩石をも打ち砕くエネルギーを秘めている≫と説いています。「弱さに徹して、剛に勝ち、強に勝つという水の本性を知ると、水を治める=治水とか利用する=利水とかの言葉には、人間の水に対する傲慢な接し方が潜んでいるように思えてなりません」と戒め「水の真髄を知れば、人間は、水に対しもっと謙虚な気持ちにならなければなりません」と結んでいます。
 老子は「最も理想的な生き方(上善)は、水のように万物を利して争わず、衆人の悪む所に居て、かつ存在は忘れられている生き方だ」と「上善如水」という言葉を残しました。水に関しては、歴史的にも文化的、精神的にも中国の方が、数段高いようです。そう言えば、「水を飲む時は、井戸を掘った人の恩を忘れず!です」と失脚後の田中角栄氏を国賓待遇で迎えた中国政府が、日本の抗議にはなったフレーズに「中国3千年の知恵」と脱帽した記憶があります。「上善如水」は、女性に人気の「日本酒銘柄」程度の認識だった私ですが、「水の町・昭和」は、先ず、≪「知水」度の高い町民が、「敬水」の精神で生活している町≫というソフトづくりと発信が必要かな・・と、竹林先生の著作から学びました。